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口腔機能発達不全の治療に関する重要なお知らせ
~口腔機能を育てる治療と矯正治療との関係について~

2026年1月20日
公益社団法人 日本小児歯科学会

小児期に口腔の機能を適切に獲得することは、全身の健やかな発育にとても大切なことです。近年食生活を含む生活様式の変化に伴い、口腔機能の発達に遅れがあったり、不適切な口腔機能の獲得が習慣化していたり、口腔習癖を持っていたりする子どもたちが多くみられます。このような現状を踏まえ、現在では、「口腔機能発達不全症」という疾患概念が設けられ、健康保険のもとで治療を受けることが可能となっています。

口腔機能が適切に獲得されていない状態が続くと、顔貌や歯並び・かみ合わせに影響を及ぼす場合があります。そのため、口腔機能の問題を正しく診断し、原因となる口腔習癖の改善や、適正な口腔機能を獲得するためのトレーニングを行って、年齢に合った口腔機能の発達を促していくことが大切です。

1.口腔機能発達不全症について

口腔機能発達不全とは、お口の働き(食べる・話す・呼吸を助ける)が年齢相応に発達していない状態を指します1)。以下の具体的な例をみて、お子さんがあてはまっていないか確認してみてください。

  1. ・食べる機能:硬いものを食べない、食べるのが早い・遅い、食べるときに音がする
  2. ・話す機能: ことばがよく聞き取れない、音の言い間違いがある
  3. ・呼吸様式: 口をぽかんと開けて口呼吸をしている、いびきをかく
  4. ・口腔習癖: 舌の使い方にくせがある など

2.口腔機能発達不全症の治療

お子様の口腔機能に関して気になることがありましたら、歯科医院の受診をお勧めします。口腔機能発達不全症の治療は、「食べる・話す」などの口腔機能が正しく発揮できるお口をつくることですので、むし歯の治療、正しい食べ方の指導や口周りの筋肉や舌を鍛える訓練などです。矯正装置を使った治療などの特別な処置ではありません。また、健康保険を利用して受けられるようになっています2)
歯科医院とご家庭での適切なサポートによって、お子さんの口腔機能をしっかりと育てていきましょう。

治療の流れの例

  1. お子さんの口腔機能に関連する生活習慣や口腔習癖についてのカウンセリング
  2. 口腔内の診察

    口腔機能発達不全症を診断するためのチェックリストを用いて、むし歯の有無、口唇や舌の形態と動き、話し方や飲み込み方などを診察します。
    専用の計測器を使って、口唇を閉じる力や舌を持ち上げる力などを計測します。

  3. 診断と説明

    チェックリストの該当する項目について、書面を用いて今後どのような治療が必要であるか説明が行われます。

  4. 治療計画に沿った管理

    生活習慣や食習慣について、食事内容、食べる姿勢や食べ方・飲み込み方についての指導があります。また、むし歯の治療や舌小帯付着異常(舌の裏側にあるひだの異常により舌の動きが妨げられている状態)に対する治療や手術が必要な場合は対応します。これらは健康保険が利用できます3)。口腔機能を育てていくためには、歯科医院の指導に基づいてご家庭でも継続的に口を閉じる・口周りの筋肉を向上させるトレーニング(くちびる・ほほ・舌の筋肉の体操)、咀嚼(噛むこと)・嚥下(飲み込むこと)のトレーニング、呼吸を意識した姿勢の練習が必要です。そして、ひと月に1~2回の頻度で歯科を受診し、口腔機能の発達を客観的に評価しながら継続します。トレーニングの期間は、最大で1年間です。

なお、以下の点にご注意ください。

  1. ① 口腔機能発達不全症の治療は、あくまで、「食べる・話す」などの基本的な口の機能を向上させるもので、歯並びの改善を目的としたものではありません。しかし、口腔機能が健全化することで歯並びの改善がみられることもあります。
  2. ② 口腔機能発達不全症の治療は、口腔機能の獲得に必要なトレーニング、むし歯の治療や舌小帯付着異常の手術を含めて健康保険で受けることができますが、矯正装置による歯並びの治療(歯列矯正)は含まれません。
  3. ③ 口腔機能の改善のために、歯並びや咬み合わせの矯正治療が必要になる場合もありますが、食べ方や話し方が気になる時にはまずは機能へのアプローチをお勧めします。矯正治療の検討は、口腔機能発達不全に対する治療の効果をみてから行っても遅くはありません。歯列矯正が必要と指摘された場合、特に高額な自費診療を勧められた場合は、セカンドオピニオンを求めるなどして、十分な検討を行ってください。
    「口腔機能発達不全症の治療=矯正治療ではない」ことを理解しておいてください。
  4. ④ 舌小帯付着異常は、明らかな哺乳障害の原因になっていると判断される場合を除き、早期(4歳以下)に手術することは本学会として推奨していません3)

1) 口腔機能発達不全症に関する基本的な考え方. 日本歯科医学会. 2024-3.
https://www.jads.jp/assets/pdf/basic/r06/document-240402-2.pdf

2) 木本茂成, これからの小児歯科健康長寿を目指すライフコースアプローチ. 小児歯科臨床. 2024, 29(10): 6-13.

3) 舌小帯切除に関する見解.公益社団法人日本小児歯科学会 ポジションステートメント.2024-2-29.
https://www.jspd.or.jp/recommendation/article25/