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母子健康手帳 「歯の健康診査」記載マニュアル ー歯の形態・色調の異常(あり・なし)の考え方と判断についてー

2023年4月19日
公益社団法人 日本小児歯科学会

考え方

母子健康手帳は、1歳6か月児および3歳児歯科健康診査時だけでなく、就学前までの口腔の健康診査の状況が記録できるようになっています。健診項目の1つである、歯の形態・色調の異常なし・ありについての判断基準を示します。
歯の形態および色調異常には様々なものが存在します。健全な永久歯列獲得のために、早めに指摘しておくことが重要なものがある一方で、指摘することで保護者に過度の不安を与えないよう配慮することも大切です。ここでは、歯の形態・色調において、「異常あり」として記載したほうがよい例を示します。その他で示したものは、必ずしも異常として指摘する必要はないとお考え下さい。

【癒合歯・写真1】

2本以上の歯が互いに結合している状態。
乳歯に多く(1~5%)、下顎乳中切歯と乳側切歯、下顎乳側切歯と乳犬歯、上顎乳中切歯と乳側切歯の結合として観察されることがほとんどである。乳歯の癒合歯症例では、後継永久歯の先天性欠如がみられる場合があるため、歯科医院での管理を勧める。

【切歯結節・写真2】

乳歯および永久歯切歯舌側面の基底結節が特に発達し、円錐状の突起を形成しているもの。乳歯では上顎乳中切歯に観察されることが多い。歯の萌出期では、順生の過剰歯との鑑別が必要である。対合歯との咬合に影響することがあるため、歯科医院での管理を勧める。

【歯の形成不全:全歯にわたって観察されるもの・写真3】

遺伝性のエナメル質形成不全症や象牙質形成不全症の場合、全歯にわたる色調の異常として観察される。重症度によっては、形態異常や歯冠部の崩壊が認められる場合もある。齲蝕との鑑別も重要であるため、歯科医院での管理を勧める。

【歯の形成不全:局所的に観察されるもの・写真4】

全身的、局所的な障害が原因で起こる。エナメル質が、白斑や褐色の色調異常から、エナメル質が薄くクレーター状の表面形態の異常を呈するもの、歯冠が大きく崩壊するものもあり、歯髄炎症状の発現や歯冠崩壊の進行を予防するため歯科医院での管理を勧める。代表的なものとして以下のようなものがある。

  • Molar Incisor Hypomineralization (MIH):第一大臼歯と切歯に限局して観察されるエナメル質形成不全
  • Hypomineralized Second Primary Molar(HSPM):第二乳臼歯に限局して観察されるエナメル質形成不全
  • ターナー歯:齲蝕や外傷による先行乳歯の根尖性歯周炎による後継永久歯のエナメル質形成不全
【色調異常:全歯にわたって観察されるもの】

出生時の全身状態や常用薬剤によって、歯の色調異常が観察されることがある。代表的なものとして、高ビリルビン血症(重症新生児黄疸、先天性胆道閉鎖症、新生児溶血症など)、新生児メレナ、ポルフィリン症、テトラサイクリン系抗菌薬の長期投与などが考えられる。

【色調異常:局所的に観察されるもの・写真5】

齲蝕が観察されない歯冠の局所的な変色は、外傷などによる歯髄内出血および壊死などが疑われる。ピンク、赤、褐色、灰褐色、黒色の色調変化として観察される。乳歯で観察される場合は、後継永久歯歯胚にも影響する場合があるため、歯科医院での管理を勧める。

【その他】
歯の形態異常として分類されるが特に記載の必要が必須でないもの
  • カラベリー結節:上顎第一大臼歯及び上顎第二乳臼歯の近心舌側咬頭の舌側部にみられる結節。
  • 矮小歯(円錐歯、栓状歯、蕾状歯):正常な歯に比べて歯冠が小さいもの。切歯では切端部が円錐状あるいは栓状を呈し、臼歯では歯冠が蕾状を呈する。