会員ページ

学会からの提言

「舌下免疫療法中の小児歯科治療について」を公開しました。

2023年5月18日
公益社団法人 日本小児歯科学会

アレルギー疾患を有する小児は、舌下免疫療法を行っている可能性があります。舌下免疫療法(アレルゲン免疫療法)とは、アレルゲンを含む治療薬を舌下より投与し、少しずつ体内に吸収させることでアレルギー反応を弱める減感作療法です。従来の注射を用いた治療よりもアレルギー反応が少なく、保険適応されたことから治療を受けている小児が増えてきました。本邦における例として、スギ花粉やダニアレルギーの小児に対して、「シダキュア®スギ花粉舌下錠」や「ミティキュア®ダニ舌下錠」が用いられています。適応年齢は5歳以上で、治療は長期間行われます。

舌下免疫療法中の小児が歯科治療を受ける機会があるときは、以下の注意が必要です。

  1. 医療面接:患者様の方から舌下免疫療法中であることを申告するとは限りませんので、歯科治療前にはアレルギーに関する質問とともに舌下免疫療法についても確認を行いましょう(舌下免疫療法開始日やこれまでの症状など)。
  2. 舌下免疫療法の副作用として、口腔瘙痒感、口腔浮腫、咽頭刺激感、耳瘙痒感、稀に喘息増悪(発作)、蕁麻疹、消化器症状などが認められることがあります。このような症状は、舌下免疫療法開始初期(約 1 か月)に多いとされていますので、舌下免疫療法中の小児の口腔内には、このような症状が観察されることがあります。
  3. 抜歯をはじめとする観血処置後や開放創、ならびに口内炎や口腔内に強い炎症症状がある場合には、薬剤の投与によって出血や局所の炎症が持続する可能性があります。シダキュア®およびミティキュア®の添付文書には、重要な基本的注意事項として「抜歯後等口腔内の術後又は口腔内に傷や炎症等がある場合は、口腔内の状態を十分観察し、本剤投与の可否を判断すること。」とされています1,2)。なお同様の注意喚起は海外でもなされています3,4)
    ただし、これまで薬剤の服用によって窒息を含めた死亡例の報告はなく、歯科治療後に重篤な症状が発症したという報告はありません5)

以上のことから、免疫療法中の小児に抜歯などの歯科治療を行う場合、必ずしも休薬を行う必要はありませんが、抜歯後または口腔内に傷や炎症がある場合は、保護者様からシダキュア等の薬剤の服用についてかかりつけ医に相談していただくとよいでしょう。

参考文献

1) 鳥居薬品株式会社.: シダキュア スギ花粉舌下錠電子添文.
https://www.torii.co.jp/iyakuDB/data/pi/cdc.pdf 2023年5月11日アクセス

2) 鳥居薬品株式会社.: ミティキュア ダニ舌下錠電子添文.
https://www.torii.co.jp/iyakuDB/data/pi/mtc.pdf 2023年5月11日アクセス

3) U.S. Food and Drug Administration.: Allergen Extract Sublingual Tablets
https://www.fda.gov/vaccines-blood-biologics/allergenics/allergen-extract-sublingual-tablets. Accessed April 18, 2023.

4) Greenhawt M, Oppenheimer J, Nelson M, et al.: Sublingual immunotherapy: A focused allergen immunotherapy practice parameter update. Ann Allergy Asthma Immunol. 2017 Mar;118(3):276-282.e2.

5) 鳥居薬品株式会社.: 「シダキュア®スギ花粉舌下錠」および「ミティキュア®ダニ舌下錠」 適正使用へのご協力のお願い.
https://www.torii.co.jp/iyakuDB/data/notice/slit_2304_2.pdf 2023年5月11日アクセス

一覧に戻る