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子どもたちの口と歯の質問箱

おなかの赤ちゃん

歯の解剖生理

  • Q.赤ちゃんの歯はいつからできるのですか?

    A.妊娠7週目頃から乳歯の芽がつくられ、永久歯も妊娠4か月頃にはでき始めます。

    • 2~4か月頃

      乳歯の歯胚(葉の芽)は、約7週目からでき始めます。

    • 5~7か月頃

      乳歯は4か月の後半から歯の石灰化(硬くなる)が始まります。

    • 〜お誕生

      乳歯が生える準備ができました。誕生頃より永久歯の石灰化が始まります。

食べ物・食べ方

  • Q.妊娠中に赤ちゃんの歯を丈夫にするには何を食べればいいのでしょうか?

    A.歯の栄養には、カルシウムだけでなく、タンパク質、リン、ビタミンA・C・Dの栄養素を含む食品をバランス良くとることが大切です。カルシウム(ひじき、チーズ、しらすぼし)とリン(米、牛肉、豚肉、卵)は、歯の石灰化(成熟して固くなること)のための材料に、タンパク質(あじ、卵、牛乳、豆腐)は歯の基礎となり、ビタミンA(豚、レバー、ほうれん草、にんじん)は、歯の表面のエナメル質の土台となり、ビタミンC(ほうれん草、みかん、さつまいも)は、もう一層下の象牙質の土台となり、ビタミンD(バター、卵黄、牛乳)はカルシウムの代謝や石灰化の調節役となります。なお、現在の厚生労働省の食事摂取基準では、妊娠中はカルシウムの吸収率が高まることから、妊娠中に必要なカルシウムの1日の所要量は成人女性と同じ600~700mgです。

    歯に必要な栄養素
    歯の基礎をつくる たんぱく質:あじ、卵、牛乳、豆腐
    歯の石灰化を助ける カルシウム:ひじき、チーズ、しらすぼし
    リン:米、牛肉、豚肉、卵
    歯の表面のエナメル質をつくる ビタミンA:豚、レバー、ほうれん草、にんじん
    歯の象牙質を作る ビタミンC:ほうれん草、みかん、さつまいも
    カルシウムの代謝や石灰化に影響 ビタミンD:バター、卵黄、牛乳
  • Q.赤ちゃんの歯を丈夫にするために妊娠中に牛乳を飲むといいのでしょうか?

    A.丈夫な歯のためにはカルシウムは大切な栄養素です。中でも牛乳はカルシウムを多く含む食品です。カルシウムを牛乳から取るようにするとカロリーオーバーになることや、アレルギーを心配して妊娠中の牛乳摂取を控えるような動きもありますが、厚生労働省の調査では、妊娠後期の卵・乳製品の摂取量と出産後の赤ちゃんのアレルギー発症には、明確な関係はないとされています。一方、最近では子どものくる病が増えているという報告があり、日光を過度に避けることによるビタミンD不足が関係していると言われています。母子ともに、日光に当たらなくなり、日焼け止め製品が優秀になったからだそうですが、カルシウムの代謝に必要なビタミンDは食品からだけでなく、一日のうち少しでも太陽を浴びることも必要です。

  • Q.赤ちゃんの歯を丈夫にするためには、牛乳が飲めないお母さんは牛乳の代わりにどんなものを摂取すればよいでしょうか?

    A.牛乳のほかにカルシウムを多く含んだ食品として、とうふ、納豆、卵、魚(いわし、めざし、わかさぎ、海老など)がありますので、これらの食品を食べるようにしましょう。ただし、カルシウムに限らず、バランスよく食べること、適度の運動を行い妊娠中のストレスをためず、妊婦さんが健康であることが大切です。

歯みがき・むし歯予防

  • Q.私は、むし歯が多いです。赤ちゃんもむし歯になりやすいですか?

    A. むし歯になりやすい歯並びや、歯の質、唾液の性質など、遺伝的なものも確かにあります。それよりも、赤ちゃんが育つ環境に左右されることが多いものです。家庭での食事や飲み物の与え方、歯みがきなどの生活習慣が赤ちゃんのむし歯をつくります。またむし歯菌はお母さんから赤ちゃんに伝播することが多いですので、妊娠中におかあさんの食生活の習慣の見直しを行い、赤ちゃんが生まれてから困らないようにしましょう。また、妊娠中の歯周病も胎児への影響が報告されています。妊娠中でも歯科受診は可能ですので、安定期に歯科にて妊婦歯科健診を受け、むし歯や歯周病などがあれば早めに治療しておくことをおすすめします。

  • Q.妊婦中にキシリトールガムをかむと、赤ちゃんのむし歯予防になると聞いたことがありますが、本当でしょうか?

    A.むし歯菌はキシリトールを取り込んでもエネルギーにすることができないため、次第にむし歯菌の数は減少していきます。妊娠中にキシリトールガムを摂取した方が赤ちゃんのむし歯菌の感染率が低下したとする報告もあります。ただし、キシリトールはたくさん摂取すると腸内細菌のバランスをくずし、下痢をしやすくなります。同様に口腔細菌のバランスも変化し、耐性菌など新たな問題が起こる可能性があります。また、味覚形成の上から、甘党になるなどの指摘もあり、積極的利用を疑問視する意見もあります。まずはお母さんの口の中をきれいに保つことが重要です。

  • Q.つわりがひどくて歯みがきができません。どうしたらいいでしょう。

    A.食後ではなく、気分が落ち着いた時に歯みがきをしてみてください。また、口の奥に歯ブラシをいれると苦しい場合は、小さな歯ブラシを使用すると楽になります。それでもつらい時は、洗口液の使用も検討してください。つわりで吐き戻しがあった場合は、お口の中が胃液などで酸性に傾いています。うがいをするだけでも違います。レモンやオレンジなど酸性のものを好んで食べるようになった方もうがいはおすすめです。

  • Q.生まれてきた赤ちゃんが口の中の問題で悩まないように、今できることはなんですか?

    A.お母さんを含めた家族全員が、歯・口の健康に注意をはらい、お口の中をきれいに保つようにすることで、生まれてきた赤ちゃんもその一員に加わることができるでしょう。食べ物のだらだら食いをなくし、食後の歯ブラシの習慣も身につけて、規則正しい生活を送ることが大切です。あわせて、家族それぞれにあった歯ブラシの仕方をかかりつけ歯科医から学んで、新しい家族のためのお口の環境つくりをしておきましょう。

妊娠中の歯科治療

  • Q.歯科でのエックス線撮影により、胎児への影響はありますか?

    A.日本で1年間に浴びる自然放射線量はおよそ1.4mSvであり、歯科治療で行われるデンタルエックス線撮影150枚に匹敵します。また、防護エプロンの着用により被ばく量を軽減でき、かつ歯科用のエックス線撮影は腹部からも離れており、胎児にはほとんど影響がありません。したがって、診断治療のために必要に応じてエックス線撮影を行っても問題ないと思われますが、撮影は必要最低限にとどめるべきです。

  • Q.妊産婦の歯科治療時の局所麻酔は使わないほうがよいですか?

    A.2%リン酸リドカイン製剤(歯科用キシロカイン、オーラ注)を通常量使用した場合、胎児や母乳への影響はほとんどないと報告されています。麻酔無しでは痛みを伴う治療の場合、痛みによるストレスを考えると、安定期(16週以降)の場合は局所麻酔を使用した方がよいでしょう。また麻酔の痛みを極力減らすため、表面麻酔や細い注射針、やさしく緊張を和らげるような対応も大切なことです。それよりも妊娠前に歯科健診を受け、疾患があれば早めに治療しておきましょう。

  • Q.妊産婦に対して、鎮痛剤や抗菌剤を処方しても問題ないですか?

    A.基本的に妊娠中は薬を内服しない方がよいと考えます。特に妊娠初期は胎児の器官や臓器の形成期であるため、薬は使用できません。しかし、薬を使用しないことで母体に悪影響があると考えられる場合には、胎児への影響の少ない(非ピリン系のアセトアミノフェン)や抗菌剤(ペニシリン系、セファロスポリン系)を必要最小限投与します。なお、授乳中の鎮痛剤や抗菌剤の使用については、母乳中に薬の成分が移行する量はわずかであるため授乳をやめる必要はないでしょう。ただし、心配な場合は授乳の直後に使用すれば影響はより少ないでしょう。

  • Q.妊娠中に風邪をひきました。薬を飲むと赤ちゃんに歯の異常が起きますか?

    A.妊娠中のお薬の服用は、歯に限らず赤ちゃんの身体に影響を与えることがあるので、基本的には薬を飲まない方向で考えます。特に妊娠初期は薬を使用しない方がよいでしょう。しかし、薬の服用が優先される場合はかかりつけの産科の先生と相談することが必要です。歯にとっても、妊娠中から出生後まで乳歯は形成されているため、この時期に薬を服用すると影響がでる可能性があります。とくにテトラサイクリン系の抗生物質は胎児に移行し骨格や歯に沈着し、歯を黄色に着色させますので、注意が必要です。

  • Q.妊娠中に歯科治療を行ってもよいでしょうか?

    A.安定期(16~27週)であれば簡単な手術や処置は可能です。治療せずに感染や疼痛をそのままにしておくほうが、妊婦に与える影響は大きいと考えられます。なお、妊娠前期は奇形を発生させる可能性があるので、応急処置のみにしましょう。また妊娠後期(28週~)では、急激に血圧が低下する仰臥位性低血圧症候群を引き起こすことがあるので体調に合わせ、緊急性がない場合は無理せず産後に行うことも考えましょう。

  • Q.妊娠すると歯周病になりやすいのでしょうか?

    A.妊娠中期から後期(妊娠16週以降)になると、女性ホルモンの増加に伴い、歯ぐきの出血や発赤、腫脹が起きやすくなります(妊娠性歯肉炎)。出産とともに元に戻りますが、しっかりとしたプラークコントロールで炎症を最小限におさえることができます。

  • Q.妊娠中は歯周病の治療はしなくてもいいですか?

    A.歯周病にかかっている妊婦は早産(妊娠22~36週での出産)や低体重児出産(出生時体重が2,500g未満)のリスクが高くなることがわかってきました。早産や低体重児出産は、新生児死亡につながる可能性が高いこと、脳性麻痺、知的障害、てんかん等の重い障害を負うことが多いこと、長期の入院から親子の愛情障害が発生し児童虐待のリスクがあること、高血圧や糖尿病等の生活習慣病になりやすいこと、さらにはNICU等における長期間の高度医療を必要とすることなどが挙げられます。妊娠したら歯科健診を受診し、適切な治療、指導を受けましょう。母子健康手帳にも「むし歯や歯周病などの病気は妊娠中に悪くなりやすいものです。歯周病は早産等の原因となることがあるので注意し、歯科医師に相談しましょう。」と記載されています。

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