学会からの提言

フッ化物の局所応用についての考え方

平成23年3月18日

一般社団法人日本小児歯科学会
理事長 朝田芳信

昨今、フッ化物の洗口や塗布に関する様々な見解が示されている。私たち、子どもたちの口の健康を守るべく公益活動に取り組んでいる日本小児歯科学会として、これを機に「フッ化物の局所応用についての考え方」をまとめたので公表する。

1.日本の子どものむし歯(う蝕)

 日本の子どもむし歯は、関係機関の取り組みが功を奏し、著しく減少している。3歳児のむし歯有病者率を例に挙げると、全国平均は24.6%(平成20年)である。しかしながら、地域格差や個人差が大きく課題も残されている。12歳児の1人平均DMF歯数も1.4本(平成21年)と改善されてきているが、「健康日本21」の2010年までの目標値(12歳児で1本以下)には到達できていない。
 乳幼児期・学童期を通じて、むし歯のない健康な歯と口を維持することや自ら健康な歯や口をつくろうとする気持ちを育むことは、生涯を通じて心身ともに健康な生活を送ることの基盤になることが、近年明らかになってきていることからも、さらなる取り組みが必要であろう。

2.むし歯の予防

 むし歯の予防は、むし歯が多因子性の疾患であることから、好ましい生活リズム、規則正しい食事や成長にみあった食生活、適切な歯磨き、フッ化物による歯質の強化など、さまざまな方法を一人ひとりにあわせて取り組むことが効果的であり、これが共通した認識でもある。
 その一つであるフッ化物のむし歯予防効果については、WHOも勧告(1974年)を出して推奨している。厚生労働省も「フッ化物洗口ガイドライン」を発表(2003年)しているように、その効果が明かであることはエビデンスに基づいた判断と考えられる。
 こうしたことから、日本の子どもたちのむし歯予防法として、フッ化物の応用は極めて有用な手段であると結論づけられる。

注.「フッ化物洗口ガイドライン」では、集団的応用と個別的応用とに触れている。

3.フッ化物の応用方法とその効果

 フッ化物をむし歯予防に応用する際には、以下の方法がある。日本では、現在、全身応用はいずれの方法も用いられていない。

(1)
局所応用
1)歯面塗布
2)フッ化物洗口
3)フッ化物配合歯磨剤
*1)と2)については、
集団的に行う方法と家庭あるいは医療機関等で行う方法とがある。
(2)
全身応用
1)水道水フッ化物濃度調整
2)食品へのフッ化物添加
3)フッ化物錠剤および液剤

4.集団的応用時の注意点

 現在、地域特性などを考慮して有用との判断のもと、保育園、幼稚園、学校あるいは地域で、歯科医師の管理の下で集団的フッ化物洗口や塗布が行われている。
 その取り組みの手順については、日本学校歯科医会が「学校における学校歯科医のためのフッ化物応用ガイドブック」(2005年)のなかで、インフォームドコンセントあるいいはインフォームドチョイスが成立することが極めて重要としている。また、集団的フッ化物の応用が、単なるむし歯予防だけでなく健康教育としての視点も持ち合わせて実施することがより効果的であることも指摘している。今後も、このような配慮は必須であると考えられる。
 さらに、フッ化物の効果について理解を求めることは重要であるが、集団的応用を希望されない方へは、フッ化物を含まないもので洗口できるような配慮も必要と思われる。

5.毒性と安全性

 フッ化物の急性あるいは慢性中毒が、歯科でフッ化物を用いた場合に生じる可能性は、適正な使用方法を守れば特に問題ないと考えられる。安全性についても、最近の知見から問題はないと判断することが合理的である。

【参考文献】

1.
フッ化物と口腔保健−WHOのフッ化物応用と口腔保健に関する新しい見解−,日本語監修:高江洲義矩、一世出版,2000.
2.
フッ化物洗口ガイドライン:厚生労働省,2003.
3.
学校における学校歯科医のためのフッ化物応用ガイドブック:日本学校歯科医会,2005.
4.
小児の口腔科学(第2版),前田隆秀他,学建書院,2009.
5.
フッ化物応用の科学:日本口腔衛生学会、口腔保健協会、2010.