学会からの提言

「子どもの間食」に関する考え方

コラム:間食について(心理面から)

心理面から間食について考えるとき、「間食」よりも「おやつ」の方が表現としては当てはまるように思える。おやつには心理面から見ていろいろな意義が考えられる。たとえば、チョコレートなどは、主食では味わえない味覚(特に甘味)を味わうことができる。また、おせんべいのガリッとした硬さや、おもちやおだんごのネチッとした粘り気、アイスクリームのとろける冷たさなどの食感を体験できる。つまり、主食とは違った味覚や食感の発達を助ける意義があるといえる。

さらに、おやつは主食とは違って嫌いなものが与えられることが少なく、選ぶことや残しておいて後から食べることなどに子どもの主張が通りやすい面がある。いうなれば、おやつ選びは子どもの主体性を表現する機会といえる。また、おやつ選びには、テレビのCMや友達が食べているからという、子どもの情報が影響する。ということは、子どもの社会的な情報や友達関係が反映され、成長するにつれて子どもの社会性の発達を映し出していると見ることができる。

ところで、この子どもの主体性と関係しているのであるが、おやつをめぐって親と子どもの意向が違うことが多くなることも予想される。これには親の方も何を食べさせるかについて、主食よりも楽に考えることができることが関係していると思われる。子どもの主張を通し過ぎると、おやつの量が多過ぎたり、食べる時間が乱れてしまうことになり、主食に悪影響が出てしまうことになる。さらに、子どもの相手が面倒だからと袋ごと子どもに与えてしまうのも、食生活の乱れや肥満につながる恐れがある。一方、親の意向が強すぎると、子どもが選んだり残したりする、おやつの楽しみを減じてしまうことになってしまう。おやつの原点に戻ると、おやつの時間と量、種類の管理は適度に親がしたうえで、親と子がおやつの時間を一緒に楽しめるとよいといえる。

コラム:味覚の発達と口の機能から間食を見てみると

子どもにとって間食は、栄養補給ばかりでなく楽しみとしての位置付けが大きい。そこには主食(食事)では味わえない「味」があり「食感」があるためです。では、子どもの味覚と大人の味覚と同じように発達しているのでしょうか。間食を語る上で味覚について考えることも面白いと思います。

飲食物が口に入ると水や唾液に溶けた化学物質が舌表面に存在する味覚器(味蕾)の味細胞を興奮させ、脳に味覚情報が伝わります。動物は味覚により栄養源やエネルギー源となる好ましい味と腐敗物や毒物など有害となる物を味で認識して取捨選択しています。一方、人間の嗜好は複雑で経験によって深められていきます。味には「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」を基本味として、多くの複雑な味はこの四基本味の混合によって形成されます。甘味はショ糖、塩味は食塩、酸味は塩酸やクエン酸、苦味は塩酸キニーネが代表的な味物質です。さらに最近、グルタミン酸ナトリウムに代表される「うま味」が加わり五基本味説が定着しています。ちなみにうま味を表す適切な用語は諸外国になく、umami tasteの学術用語として専門雑誌にも認められ、日本の食文化と日本語の豊かさ、素晴らしさを再認識します。では、子どもの味覚はいつごろから認められ発達するのか興味があります。人間の味覚システムは誕生前にすでに高度に発達していて出生後も発達し続けます。新生児は味に対する反応が強く、味を感じ取る味蕾の数は成人の1.3倍あります。なお、成人の味蕾の数は約1万個です。子どもは成人より味に対して敏感なのです。

出生後、数時間で苦味を嫌い、甘味、うま味を好みます。一般的に味覚は年齢に応じて少しずつ深みを持って発達していき、生後2〜3か月で味の好みに差が出始めます。人間は本能的に甘味、塩味、うま味を好みますが、これは母乳と関係していて母乳のエネルギー源である炭水化物は甘味で、たんぱく質であるアミノ酸はうま味、ミネラルであり生存に必須である食塩は塩味です。味覚の成立は複雑で、塩味が甘味を強調したり、酸味が甘味を打ち消したりしますから味の組み合わせも大切です。豊かな味覚を形成するのには経験が必要ですから、子どもの味覚の発達には、育成するという態度が必要です。そこで大切なことは、母乳は決して濃い味ではないということです。低年齢時期から濃い味を覚えてしまうと奥深い味覚の発達を阻害しますので、子どもの食事にしても間食にしても薄味からスタートして色々な食材を使ってみましょう。

また、味覚とともに咀嚼すること、すなわち食物の摂取は生存に必須であるために食物を咀嚼し味わうことは強い快情動が起き、覚醒レベルも上昇します。噛むことは脳への良い刺激となりますし、発育期に十分噛んで咀嚼することで口腔顎顔面領域の筋肉、骨、神経系ならびに唾液腺の発達を促します。咀嚼にとって唾液は必須であります。ではもう一歩、話をすすめて子どもの唾液分泌も考えてみましょう。新生児でも唾液分泌は見られ、生後3〜4ヶ月ぐらいから序々に増加し始めます。しかし、新生児や乳児はまだ上手に唾液を飲むことはできません。また口をしっかりと閉じることもできないので唾液は、よだれとして口からでていってしまいます。唾液の分泌と嚥下機能のバランスがとれるようになると、よだれは出なくなります。

食物を咀嚼するには健康な歯が必要です。歯はあごの骨の中で歯根膜という線維状の組織で支えられ、ちょうどハンモックのような状態にありますから少し動きます。物を噛むと歯根膜に圧力を感じる受容体があり、脳へ伝達して柔らかい食品か硬い食品かを瞬時に認識してちょうど良い力で噛むことができる仕組みになっています。従って歯が十分に揃わない状態で硬い食品を与えますといろいろな問題が生じます。子どもの口の中を見て、奥歯が生えているか、永久歯に換わっているかなどを確認しながら味覚の発達、脳・身体の発達を促す食事や間食を与えて、健康で情緒豊かに成長してもらいたいと思います。間食は濃い甘味で柔らかな食感の食品と思われがちですが、種々な味と食感を経験させて豊かな食生活を育む基盤として子どもの食事と間食は大切です。

コラム:成長に合わせた食の形成長に合わせた食の形

前歯に指を少しだけ挟んだまま、「つば」を飲み込んでみてください。飲み込みにくくないですか。人間がものを飲み込むときには、上の歯と下の歯を軽く当てて舌が食物をのどの方に送り込みます。のどの奥では、食物は食道へ、空気は気管へ、ちゃんと分けて送り込みます。つまり飲み込む時には息を止めています。

では、歯のない赤ちゃんはどうやっておっぱいを飲み込んでいるのでしょうか。お母さんの乳首をくわえながら、息を吸いながら、おっぱいを飲み込んでいます。不思議ですね。

前歯が生えてくるころになると、飲み込み方が変わってきます。前歯が出てくると離乳食の開始、奥歯が咬み合ってくると固形食の開始です。つまり、人間は発育や成長に合わせて、食べ物や飲み込み方が変わってきます。これに逆らうと正しい成長が損なわれると考えられます。

いつまでも母乳を与えていたり、哺乳瓶を使用していると、歯と歯を当てないで物を飲み込む癖をつけてしまいます。 鳥がこどもを育てるのに、はじめは親が十分消化した食べ物をもどして与え、次第に未消化のものに変えていき、最後には生きたままの虫を与えて巣立たせるように、成長に合わせた食べ物を与えるのが親の役割で、欲しがるものを与えるのが親の役割ではないと思います。

日本の食事は欧米と異なり「粒」が主食です。欧米の「粉」の食事では、水分を加えることで柔らかくなり、離乳食という特別な形態をとらなくても食物を取り込み、栄養とすることが可能です。日本の食事は「粒」が主食のため、食物の持つ栄養素をすべて摂取することが出来、優れた食文化ですが、練習が必要で、それが離乳食であると考えられます。離乳食はお乳から離れるための食事です。離乳食が進んだらお乳から離れることを考えましょう。

コラム:間食のエチケット

間食にどの程度の栄養摂取を期待すべきかというと、現代の高カロリーの食事を考えると、ある程度の炭水化物で十分ではないか。つまり、栄養の摂取というよりは、楽しみ、好きなもの、心の安らぎなどを求めた「おやつ」でよいと考えている。

しかし、そこで求められるのは、食べ物に対する感謝であり与えてくれる方への感謝であると思う。「はーい、おやつだよ。手を洗っておいで」この感覚を大切にしていきたい。母親に問診すると、思ったより手を洗わせている者は少ない。どうせ子どもが手を洗ってもそんなに清潔であるはずがない、手を洗った後あちらこちらさわりながら帰ってくれば手は汚染されている。清潔主義ではなく、「これから大切な物をいただくんですよ。身を清めてからいただきましょう。神社にお参りする前に手を洗い、身を清めるのと同じですよ」と話している。

身を清めたうえで、ちゃんと座り、「いただきます」と感謝をして食べ始め、「ごちそうさま」とお礼を言ってから席を立つようにすれば内容はあまり重要ではないのではないか。もちろん、刺激が強すぎるもの、健康に悪いものは避けるべきだが、今日あった楽しいことなどをおしゃべりしながら、好きなものを楽しく食べることが必要であると考える。