学会からの提言

「子どもの間食」に関する考え方

「子どもの間食」に関する考え方

平成24年2月28日

小児科と小児歯科の保健検討委員会

はじめに

子どもは発育が速いが消化器が小さいため、大人のように1日3回だけの食事では栄養を満たし得ないので、定まった食事と食事の間に1〜2回の間食を要するとされてきた。しかし、近年では子どもの栄養状態の向上とともに、間食の考え方は変わってきている。

従来、間食には手軽さから菓子類を主体に与えている場合が少なくない。その結果、間食の過剰摂取が肥満やむし歯の原因になっているともいわれる。また、だらだらと食べていると、食事のリズムが乱れやすくなる。

子どものおやつ的間食は栄養補給(補食の意味)だけでなく、休息と喜びを与え、親や家族、友達とのふれあいの場になるといった広い視野からの考えもある。そこで、子どもの間食について、その意義と問題点を整理し、現代における間食の考え方をまとめた。

間食の歴史

昔、一般庶民は働く階層によって、1日3回、4回の食事であったが、公家社会は2回食であったという。武士の食事は朝夕2回食を原則としていたが、戦乱が重なるにつれて3回食が続き、これが日本人の3回食の習慣をつけたと言われる。3回食になったのは室町時代(1392〜1573年)というが、そのあとの江戸時代寛政年間(1787〜1801年)という説もある。

貴族社会では二回の食事に加えて、食事と食事の間の「間食」という言葉が平安時代の「延喜式」に残っている。「延喜式」は701〜819年の律令の施行細則を編集したもので、年中儀式や制度などを記したものである。

延喜式には、支配階級にあった貴族は食事を朝夕の2回に限るのを習慣としていたが、その他に簡単な「間食」をとっていたとある。その間食の内容は、当時外国からの貿易で入ってきた砂糖や寒天などで作った菓子類と律令に記載されている。

間食は当時の富裕層の1日2回食の間の楽しみだったようである。当時の庶民も、食事以外に口にするものがあったろうが、富裕層が口にする「間食」は、律令に記載されるほど、一般庶民にとっては手のとどかないものであったであろう。

現代の間食の考え方

間食とは1日3回の食事の間に食物を食べることをいう。日本人がいつ頃から3回食になったのかは必ずしも定かではないが、明治時代には3回食が定着していたと思われる。終戦から昭和の時代の小児科の教科書には間食はおやつと同義で、幼児に必要な栄養補給と息抜きや楽しみとして記載されている。ただ、最近の教科書には間食やおやつの記載は見られず、それに代わって肥満が記載されている。今村栄一「現代育児学」(12版1999年)にはおやつの記載がある。小児科医で栄養学を専門とする今村はおやつの必要性として、栄養面だけでなく、子どもの楽しみや期待などを挙げている。最近の育児書にはおやつの記載はないものが多い。

このように、20世紀の中期までのように感染症と栄養不良で乳児死亡率が高い時代には間食は栄養補給と楽しみ、息抜き等の意味で受容されていたが、最近のように飽食の時代で欠食・肥満・やせなどの食生活の乱れが問題となっている現代では、間食は好ましくない食行動として捉えられているようである。しかし、たとえ間食は好ましくない食行動でも、おやつ的要素を持つ場合は幼児には必要ではないかと考える小児科医も多い。また、間食には一般に夜食は含まれないが、子どもの食生活の問題と対応を考えると夜食も含めた方がよいとも考えられる。

以上のことから理解されるように、栄養補給と子どもの楽しみ、おやつ的要素の間食に対しては肯定的であるが、食生活の乱れや肥満に結びつく間食は将来のメタボリック症候群とも結びつく好ましくない食行動であるというのが現代の考え方のようである。

好ましい間食
食生活を含めた生活全体が規則的に営まれている場合に好ましい間食になる。すなわち、一日3回の食事が規則正しく、家族との団欒の中で取られ、リズムのある生活が営まれている場合に間食は好ましいものとなる。

幼児期前期の間食

生まれて数か月まで乳児は、お乳を十分に飲んでも、やがて空腹になってしまう。したがって、1日何回も食事(乳汁栄養)をとることになる。その後、離乳食から幼児食に移行してくると腹持ちのよい食物が増えるため、食事の間隔が長くなるが、幼児の消化機能は未熟であり、1回に食べられる量も限られるため、特に昼食から夕食にかけては間に栄養補給が必要である。また、1日3回の食事だけでは必要なエネルギーや栄養素を満たすことが難しい。それは、幼児期特有の遊び食べ、むら食い、小食、あるいは食事時に寝てしまい、欠食などが起こるためである。このことからも間食は栄養素を整える「補食」の意味もある。この時期は離乳完了していないことがあるが、この場合は基本的に補食を必要としない。離乳完了して3回の食事が栄養の主体になったときに初めて補食が必要となる。

好ましい間食
1日3回の食事と1〜2回の間食は、時間を決めることで生活リズムを整えることができ、きちんと空腹と満腹の感覚を覚えることができる。これらが健全な生活習慣の基礎ともいえる。

間食の適量は、運動量や体格の個人差もあるが1日に必要なエネルギー量の10〜15%が目安となり、1〜2歳児は約100〜150kcalである。たとえば、内容は水分とおやつの組み合わせが適当といえる。単なる菓子類ではなく乳製品、いも類、炭水化物、くだもの類などを組み合わせるといいだろう。
好ましくない間食
最近の間食の問題点は間食が夜食化していることである。夜食とは夕食後2時間以上経過してから寝るまでの間に食べることを指すが、1歳児では40%、2〜3歳児では30%が夜食をとっている。これでは「朝ごはんを食べよう」といっても難しいのが現実である。また、「子どもの欲しがる時に与える」のは20%であるが、年齢が低いほどこの傾向は強い。子どもの欲しがる時におやつを与えれば食欲にも影響し、生活リズムを乱す原因ともなる。

幼児期後期(3歳以降)の間食

幼児期は乳児期に比較して成長は穏やかになるものの、3歳以降になると活動性も徐々に増加してくることもあり、体重1kgあたりに必要なエネルギー量は成人の数倍になるといわれている。しかし消化機能は成人に比較して未熟であり、3回の食事だけでは必要エネルギー量が不足してくる可能性が出てくる。このため、必要な熱量を摂取するためには3回の食事以外に食物を摂取する必要があり、間食が必要になる。

また、3歳過ぎ(幼児期後期)になると「おやつとしての楽しみ」の要素も重要になる。日常の食事とはちょっと違った内容や与え方によって、普段、食事にはあまり興味を示さない子どもでも、おやつになると目を輝かせることが多い。したがって、間食の時間を、ゆったりとした雰囲気で休息を取りながら、親や家族と一緒に食べたり、友達と共に食べるような「楽しいひと時」にすることが大切である。つまり、楽しみ、好きなもの、心の安らぎなどを求めた「おやつ」との位置づけも必要であろう。

幼児期後期の食の機能

・空腹のリズムがもてる。
・食べたいもの、好きなものが増える。
・家族や仲間と一緒に食べる楽しさを味わう。
・栽培、収穫、調理を通して、食べ物に触れ始める。
・食べ物や身体のことを話題にする。
好ましい間食
3歳以降の間食は、楽しみや気分転換のほか、簡単なお手伝いを通して食べ物の栽培、収穫、調理について触れ始める機会となる事が多い。間食の総合エネルギーは主食の約10-15パーセントで、幼児期後期では140から240kcalである。昨今、間食から摂取されるエネルギーが多く、一日摂取カロリーの25パーセント程度になっている場合も見られ、将来の肥満やメタボリック症候群が危惧される。間食の回数と時間はいわゆる「3時のおやつ」というように、1日1回で20-30分くらいで済ませたい。食事に関するしつけを行うことで、だらだら食いや遊び食いなどを是正し、食生活リズムを作ることが必要である。

間食の内容は、味や栄養に偏りがないことが望ましく、季節の行事や旬を感じられるものと市販のお菓子などを少しずつ組み合わせることが望ましい。すなわち、果物、乳製品、いも類等にお菓子を組み合わせてバリエーションを加えると良い。市販の菓子類を与える時は、品質保持期限、成分表示(添加物、塩分、脂肪分など)に気を配る必要がある。また、この時期の食の適切な知識の習得は、将来の健康への教育になると考えられるので、甘味の強いものや塩分の強いものは嗜好を偏移させ、むし歯や肥満、高血圧などの将来の生活習慣病の端緒になることを話題にしつつ、おやつの内容や時間に気を配る必要があろう。つまり、大人の養育態度が子どもの嗜好の形成に大きく影響するので、根気良いしつけが大切となる。

以上より、適切な栄養補給と、食事のしつけ、食に対する理解、食を通しての精神発達、将来の健康教育に寄与することがこの時期の好ましい間食である。
好ましくない間食
間食として市販の菓子類(特に糖分の多い菓子類、油脂の多い菓子類)や甘味飲料の摂取が多くなると、3度の食事に影響が出てくる。また、遊びなどでのエネルギーの発散が少ないと、食欲がわかず食事量が少なくなる。次の食事までにお腹がすいておやつを欲しがり、また食事が少なくなるという悪循環に陥ってしまう。味覚形成の面からも、甘味食品・飲料に偏ったおやつは避けたい。

とくに、親が食事のしつけに関心を持たず、手軽な菓子類をおやつに利用していると、お菓子を与える機会が増えて、しっかり食事を摂らずに、お菓子が中心の食生活になってしまう可能性がある。その場合には偏食を直すことがとても難しくなる。

また、たとえキシリトールのようにむし歯にならない甘味料を用いた食品でも、歩きながら、ゲームをしながら、テレビを見ながらだらだら食べるのはよくない間食である。

学齢期の間食

小学生は幼児期よりも一般的に運動量が増加するので水分摂取や栄養補給からも間食を必要とする。低学年と高学年の運動量の違いは顕著であるが、特に運動部(クラブ)の多様化、学習塾・習い事利用の低年齢化により栄養摂取量にはかなり差がある。小学校低学年児は胃の容積も小さく、一回量は少量しか摂取できず、頻回の飲食物摂取が消費エネルギーの関係からみても必要になるので、間食は補食として考えたい。

中学生の成長発育上の特徴は、人の生涯の中で最も急激に心身の成長発達が促進する時期である。生徒は心身ともに不安定になりやすく、注意深い指導と管理などの対応が必要であるとされている。この時期は身体発育のために必要摂取エネルギーの一日量が人生の中でも多い時期である。

しかし、歯科の観点からすると飲食物摂取の間隔をしっかり保つことも肝要である。また、脳の発達には糖分が欠かせない時期ではあるが、摂取回数や量が過剰にならないようにするなどのシュガーコントロールは必要である。小学校低学年のおやつの内容の実態は、スナック菓子が多く、次いでチョコレート、ビスケット・クッキー、アイスクリーム、あめ、米菓の順になっている。また、学童期以上の夜食の種類は、男女差が若干みられ、中学校男子は特にラーメンが多く、次いで飯類やパン類等の炭水化物が多い。一方、小・中学校女子は、アイスクリームや果物が上位にあげられている。清涼飲料水は、約50%の人が1日に100ml以上飲んでいる。特に年齢が高くなるほど500ml以上飲む人が増え、中学・高校生の男子で割合が高い。

好ましい間食
塾や習い事をすることが少ない小学校低学年までは幼児期後半と同じでよい。しかし、おやつはTVコマーシャルなどの影響を受けやすいので、親の管理のもとで適切なおやつの話を子どもに聞かせながら、子どもと相談をして決める。飲み物も同じようにする。与える量は、子どもの活動状況に応じて適量にする。1日の栄養素では、特にカルシウム、鉄分が不足しがちである。その栄養を多く含む食品を使って間食にすると良いであろう。

学年が上がると、友人と遊びの合間に間食を楽しむようになる。また、自分の間食の適量が分かり、残すこともできる。組み合わせも考えることができるようになるので、自分で考えて摂れるようにしていくのがよい。

ただし、1日3回の食事を規則正しく食べている環境があり、その上で間食の内容や量が食事に影響しない場合が、好ましい間食が生まれる前提といえる。
好ましくない間食
小学生になるとゲームをしながら、テレビを見ながらなどの「ながら食べ」が増え、全体では約20%が「よくある」と答えている。何かをしながら食べることは、人とのコミュニケーションや味わって食べる習慣がつかず、「ダラダラ食べ」になりやすく、むし歯の原因ともなる。

給食で嫌いなものが多いと、間食の量が食事並みになることがある。嫌いなものをどう克服するのか、間食に頼り過ぎてはいないかを日々確認する必要がある。また、甘味食が好まれやすいが、固定観念に囚われないようにするべきである。市販されているものが手軽であるが、高カロリーのものが多いので、限度をもって与えるようにすることを忘れてはならない。肥満との関係を忘れないようにするべきである。

スナック菓子ばかりを食べる、朝食を食べないでおやつで補う、ペットボトルを持ち歩いて水代わりに飲む、などは好ましくない間食であると言えよう。

【参考文献】

 ・
樋口清之:日本食物史、柴田書店、1960年
 ・
江原絢子他:日本食物史、吉川弘分館、2009年
 ・
学齢期のおやつに関するデータは見直してみよう間食(少年写真新聞社)、2003年

表:夜食の回数

年齢別に見たおやつをほしがる時に与えられている子どもの割合

間食の与え方で習慣にしたくない例

・子どもと出かけるときは必ずおやつを持ち歩く。
・たとえば「嫌いな野菜を食べたらケーキを買ってあげる」などという。
・電車や車の中で子どもを大人しくさせるためによく何かを食べさせている。
・牛乳、イオン飲料、甘味飲料を水代わりに飲ませている。
・留守番、手伝いをした時は好きなお菓子を用意する。
・テーブルの上に食べ物を常に置いている。

おやつの組み合わせ適量例

[幼児期前期(1〜2歳)]
1. 1日2回に分ける場合の例
1回目麦茶+ビスケット(マンナ)5枚37kcal=37kcal
2回目牛乳100ml70kcal+バナナ1/2本40kcal=110kcal
2. 1日2回に分ける場合の例
1回目麦茶+果物入りヨーグルト(プレーンヨーグルト50g31kcal+リンゴ25g14kcal)=45kcal
2回目麦茶+ふかしいも80g105kcal=105kcal
3. 1日1回の場合の例
牛乳100ml70kcal+サラダせんべい2枚53kcal=123kcal
[幼児期後期(3歳以降)]
1. 1日1回の場合の例
・おはぎゴマ1個150kcal+お茶=150kcal
・アロエヨーグルト1個70kcal+南部せんべい3枚100kcal=170kcal
・マドレーヌ1個173kcal+お茶=173kcal
[学齢期]
1. 1日1回の場合の例
・ドーナツ1個(シュガードーナツ)176kcal+ミルクティ紅茶(砂糖なし)103kcal=279kcal
・どら焼き1個207kcal+お茶=207kcal
・せんべい(ばかうけ)4袋210kcal+お茶=210kcal